音盤日誌@金沢(仮)

レコード(LP/CD/DVD)を聴いて思ったことを書く日誌。

日野元彦 / IT'S THERE

これはちょっと評価しにくい。強力な布陣が出す音はやはり強力なのだが、正直レッド・ツェッペリンの曲をジャズ調インストでやることの意義を当の(元彦氏は別としても)ミュージシャン達がどの程度に考えていたのか、そういった疑問をつい挟みながら聴いて…

MICHEL GODARD / MONTEVERDI ~ A TRACE OF GRACE

ジャケット中央の「MONTEVERDI」という文字列はポピュラー音楽の感覚ならアルバム・タイトルだと思うところだが作曲家の名前だった。こういうちょっとしたところにも馴染みの薄さがまず先に来るクラシック音楽の世界なんだが、スティーヴ・スワロー参加作と…

MILES DAVIS / MUNICH CONCERT

正規のディスコグラフィーには含まれないハーフ・ブートレグの類だが内容は粗悪品に非ず。音質良し(ブートレグとすればA+級)、コンサートの全曲収録(3枚組!)、マイルス・バンドが絶好調だった1988年の録音、と来れば悪いはずはない。しかも安かった…

CARLA BLEY, STEVE SWALLOW / DUETS

飽きもせず何年も聴き続けているアルバムというものがあって好きとか嫌いとかいう感覚もすでに少し超えている。カーラ・ブレイとスティーヴ・スワローはデュオ・アルバムを3枚作っているが、この一作目はあとの二作に比べてS・スワローが前に出張って来な…

BILL GOODWIN / SOLAR ENERGY

ビル・グッドウィンのたぶん唯一のリーダー作。自曲の披露とか人脈の誇示とか、たぶんそういう欲が少ないドラマーがここ一番の一枚を出すとき、各々固定メンバーのカルテットとトリオを半々に配置しつつジョン・スコフィールドのみは全曲参加させるというア…

JEFF BECK WITH THE JAN HAMMER GROUP LIVE

<Blow by Blow>、<Wired>、<There And Back>をして三部作と表現する向きがあるが、異議ありだ。三部作とするなら<There~>ではなく本作<with The Jan~>が入る。ホップ・ステップ・ジャンプ。ただ最後のジャンプは少し飛距離が足りなかった。そこ…

JEFF BECK / WIRED

一般にジェフ・ベックは<Blow by Blow>の新境地=インスト路線をその次作である本作「Wired」で決定付けたということになっている。そこまでは合っている。けれど、そして現在に至る--と続けると少し違う。ベックは本作で一度終わった。次作<There And …

JEFF BECK / THERE AND BACK

1980年作。当初はヤン・ハマーを擁した冒頭3曲がインパクト大だったんだが、今の耳にはあとの5曲よりも分が悪い。なぜなら5曲のほうがテンションは低いながらも現在のジェフ・ベックにより多く通じるものがあるからだ。ただそれはベックが今に至る息の長…

CHARLES MINGUS / CHANGES ONE

以下雑学。ジョニ・ミッチェルのアルバム<Mingus>では曲と曲の間にチャールズ・ミンガスの生前の肉声が挿入されているんだが、「Funeral」と題されたパートで誰かと会話している後ろでやかましく鳴っているレコードは本作2曲目の「Sue's Changes」です。…

CHARLES MINGUS / CHANGES TWO

同時録音二部作の後編。最初に聴いたのはまだLPの時代。そのとき本作は手に入ったが地元のレコード店をまわっても<One>が見つからなかった。といってもオーダーを試みた記憶はないので店頭に無くてそれで早々にあきらめたのだろう。レジのお兄サンやお姉…

CHARLES MINGUS / TOWN HALL CONCERT (その2)

全2曲入り。たった2曲。合わせて約45分。CD1枚の容量にはまだ30分ほど余裕があるんだがこの潔さがよい。これでいいのだ。けれどダメなところもある。2曲目途中に音が途切れる箇所があるのはLPではそこがA/B面の変わり目だったからだが、長尺…

CHARLIE HADEN, QUARTET WEST / NOW IS THE HOUR

映画音楽とは以前は鑑賞音楽の確立した1ジャンルだったはずだが、映画本編をノーカットで簡単にビデオ鑑賞できるようになった今ではその音楽部分だけを積極的に切り取って楽しむ意味はもう失われた。カルテット・ウェストの音楽にはかつての上質なサントラ…

MILES DAVIS / YOU'RE UNDER ARREST

嬉しいような迷惑なような20枚組(!)モントルーBOXが出たとき、買わないわけにもいかなかったがとっさに聴き入る体勢にもなれず死蔵していたところ、最近ふと鳴らしてみるとこれが悪くない。大挙CD8枚にわたって収録されたジョンスコ、ダリル・ジ…

LED ZEPPELIN / IN THROUGH THE OUT DOOR

若い人に向かって色んな音楽を聴きなさいなどと青臭いことを言うつもりもないが、でもそうしたほうがいい。レッド・ツェッペリンの音楽にジャズの要素は無い。それでもジャズを自分なりに一通り聴いた後に改めて耳にしたとき、このバンドが一味違って聴こえ…

PAUL BLEY / HOMAGE TO CARLA

別れたカミさんの曲だけでアルバム一枚作るというのも芸術家のやることは常人の理解を超えるわけだが、ふと、これはもしかして慰謝料を補填するための行為なのではないか?と考えた。作曲者にも金が入る。馬鹿な夢想に過ぎないことは承知で自分のこの思い付…

CHARLES MINGUS / TOWN HALL CONCERT

昔LPで持っていた本作をCDで買い直した。内容は文句なし。それはいいとして、これがたったの800円ナリ。安価なのはけっこうなことだがそこまで安くしてもらわなくてもいいよ。その一方でたいしたものでもなさそうなコンサートでも気軽とはいえない額…

CARLA BLEY, STEVE SWALLOW / GO TOGETHER

カーラ・ブレイとスティーヴ・スワローのデュオ2作目。馴染みすぎて私的にはもうほとんど古典だ。しかし古典と呼びたくなるほどの定評価ということは実は日常的にはもうあまり聴いていなかったりもする。そういうアルバムを久しぶりに聴くにあたってはある…

JO STAFFORD / JO + JAZZ

「You'd Be So Nice To Come Home To」といえばボーカル物ならまずはヘレン・メリルだが、あの感情過多な歌い方がどうも苦手。クールなジョー・スタッフォードのほうがずっと好きだ。それが本作を「You’d Be~」の決定版バージョンであると定評価たらしめた…

THE CARLA BLEY BIG BAND / LOOKING FOR AMERICA

2002年録音作。というと「9.11」の翌年なんだが、このアルバム・タイトルはやはりあの事件以来の自国を憂いてのものだったのだろうか。カーラ・ブレイはアメリカをどう見失ったのか?。音楽に政治色を持ち込むことに別に反対はしない。が、そこに無関心でも…

GARY BURTON, PAT METHENY, STEVE SWALLOW, ANTONIO SANCHEZ / QUARTET LIVE

2006年の大事件だったゲイリー・バートンの復活カルテットなんだが、そのときのこのライヴ盤が出たのが2009年。すぐに出ていればメガトン級の新譜になっていたはずなのに3年待たされる間に鮮度も有り難みも大いに落ちてしまった“怨み盤”。けれどそれからさ…

GIL EVANS / THERE COMES A TIME (Original Version)

ギル・エヴァンスの最高傑作はこれだと思う。単に演奏内容での判定なら超強力盤は他にもある。<Preistess>しかり<Sweet Basil>しかり。しかしライヴ盤というものには自然物の趣があって人が手をかけた作品と見過ぎるには若干の抵抗もある。それではとス…

GIL EVANS / TOKYO CONCERT

収録当時のギタリストだった川崎燎氏によるライナーノーツがなかなか良い。ギル・エヴァンスを偲ぶエピソードで綴られている。G・エヴァンスという人は「オーディオ機器にはチンプンカンプンな人」で、自宅のプレイヤーか何かの調子が悪くなったら「Ryo、ち…

MILES DAVIS / SOMEDAY MY PRINCE WILL COME

「Pfrancing」と「Teo」という派手な2曲にはさまれたバラードの曲名が覚えられない。あぁそうか「Drad-Dog(ドラッド・ドッグ)」だった。たぶん「ブラック・ドッグ」(*by Led Zeppelin)と語感が似ているせいで「ドラッド・ドッグ」が別のハードな曲の名前…

PAUL MOTIAN AND THE EBBB / PLAY MONK AND POWELL

エレクトリック・ビバップ・バンド(EBBB)のセロニアス・モンク&バド・パウエル集。1998年録音。ベースがスティーヴ・スワローなんだが、現スワロー・クインテットの素晴らしすぎるフロントマン二人、つまりクリス・チーク(ts)とスティーヴ・カーディナス(…

THE SWALLOW QUINTET / INTO THE WOODWORK

スティーヴ・スワローという人はおよそキャリアに浮き沈みのない人だ。絶妙な輝度を保ちながら途切れることなく緩やかな上昇を続けている。そして本作でひとつの新たな段階に到達した。この進化が本作ひとつに終わらないならポール・モチアン、ゲイリー・バ…

GEORGE SHEARING & JIM HALL / FIRST EDITION

デュオ・アルバムが好きだ。記憶をたどるとたしか最初に買ったデュオ・アルバムが本作だ。1981年のリリース。NHK-FMのジャズ番組の新譜紹介コーナーでかかったのを聴いたのが買ったきっかけだ。当時はレコードのそういう買い方をよくしたものだ。ジム・ホー…

MILES DAVIS AT FILLMORE

どれがイーストでどれがウェストだったか覚えられないエレクトリック・マイルスの一連の“フィルモア”。まぁどっちでもいいです。先夜これを鳴らしながら寝床に就いたら悪夢を見て目が覚めた。経った時間はわずかでCDがまだ鳴っていた。ちょうどチック・コ…

NARA LEAO / GAROTA DE IPANEMA(イパネマの娘)

ボサノバを聴き始めてからもだいぶ経つがあまり幅広く聴いていたとはいえない。本作も長年の愛聴盤だがナラ・レオンの他アルバムはほとんど聴いたことが無し。それが最近ブラジルの音楽を聴く比率が高くなって自然N・レオンの諸作にも手が伸びた。さて、他…

THE THELONIOUS MONK ORCHESTRA AT TOWN HALL

なかなかいいんですよね、セロニアス・モンクのビッグ・バンド。いやビッグではなくて10ピース・バンドか。どっちでもいいけど正規のビッグ・バンド編成よりもこのぐらいのほうが好きです。しかし「正規」ってのもそもそも変な話ではあります。「フルバン…

DIANA KRALL / THE LOOK OF LOVE

いつの間にか10数年も前のアルバムになる。ひと頃よく聴いたがダイアナ・クラールに関しては本作よりも地味ながら真面目に音楽の楽しさにあふれた最初期の何枚かのほうがその後の愛聴盤になっている。けれど久しぶりに聴いた本作の印象は意外にも地味で真…