音盤日誌@金沢(仮)

レコード(LP/CD/DVD)を聴いて思ったことを書く日誌。

CARLA BLEY / SEXTET

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1987年作。「Lawns」という曲はジワジワ広まって今ではジャズ界でちょっとしたスタンダードナンバーになっているようだが本作収録のそれがオリジナル。

 

その昔、クロスオーバー・ブームなる現象があって、それはかなりの部分でインスト・ギタリスト・ブームでもあったわけだ。リトナー、カールン、その後いろいろ続いて云々云々。それは私個人的には(周囲の少なからずの人達にとっても)ギターを目印としたロックからジャズへの入り口であり、もう少し大げさに大局的に見れば人ひとりの人生でそう何度もあることではないムーヴメントの体験でもあったわけだ。が、どっぷり浸り過ぎてある時点でギター・ミュージックに食傷するようになった。そうすると反動で今度は一例に挙げればウェザー・リポートのようなギター色のない音楽ばかり聴くようになった。あるいは時代をさかのぼってオーソドックスなモダン・ジャズ・コンボ(ギタリストがいないケースが多い)を好んで聴いた。そして、そういう音楽を聴くことが何かそれまでより高尚な行為であるかのような勘違いをするまでになるわけだ。カーラ・ブレイなどもそういう切り口を楽しんで聴いていたかもしれない。

 

そのC・ブレイが本作でまさかのギター・フュージョンをやった。初めは困惑した。これはTスクエアかカシオペアですか?。でもすぐに分かった。これはギターに食傷した者に向けたC・ブレイの回答だと思いたい。「アタシがやるとこうなるのよ」。勘違いを見事に修正してくれた。素晴らしい。ギターそのものには罪は無かったわけだ。

 

何作か前から予兆はあったが本作でC・ブレイはついに管楽器を完全に廃した。テーマ・メロディはハイラム・ブロックが担当する。C・ブレイの意図を完璧に受け止めるギタリストはこの時期H・ブロック以外にはいなかったのではないか。マイク・スターン(人脈相関図を書けば細い線で繋がる)でもいい線までいったかもしれないが、おそらく客演の域を出ないものになっただろう。改めてH・ブロックに合掌。本作を最後にカーラ・ブレイ・バンドはギタリスト不在の本来の形にもどる。