音盤日誌@金沢(仮)

レコード(LP/CD/DVD)を聴いて思ったことを書く日誌。

CHARLIE HADEN / THE BALLAD OF THE FALLEN

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リベレーション・ミュージック・オーケストラの音楽には哀愁あふれたダサい要素が満載だ。少なくともオシャレではない。ジャズを聴く動機の半分が他と一線を画すための自己満足であるとするなら、大衆文化たる日本の演歌にも(ときには軍歌調にですら)通ずるかのような部分には抵抗感が拭い切れないわけだが、自分も歳をとり要らぬ気負いと共にそんなものも消えた。哀愁のメロディー万歳。好きと公言できるバンドにやっとなった。

BILL EVANS TRIO / PORTRAIT IN JAZZ

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緊張感あるね。ジャケットの顔もちょっと怖いです。ビル・エバンスの怖さというのは天才なのに自分が天才だとあまり分かっていない人の怖さだと思う。悪気はなくても真正面に立たれたら凡人の側はたぶん少し怖いよね。その点、キース・ジャレットあたりは自分の天才をよく知っている。聴衆が自分と同レベルにあることを欲していない。だから聴衆はキースの演奏を凄いと思っても怖いとは思わなくて済む。エバンスは怖いよね。

GIL EVANS & LEE KONITZ / ANTI-HEROES

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ギル・エヴァンスリー・コニッツのデュオ盤<Heroes>の続編。ウチにあるのは正続2枚をカップリングしたCDセット。内容的には同日の実況録音を2枚に分けた意図は特に無いと思われる。スティーヴ・レイシーとの<Paris Blues>では夜中に聴くべき一枚だったと昼間に聴いたときの小さな後悔があったりしたが、楽器編成が同じなのに本作ではそんなことは感じない。どちらも静寂。だが本作は外の陽の高さと違和感がない。違いは何?。

MILES DAVIS / STAR PEOPLE

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Come Get It、It Gets Better、What It Is、That's Right、That's What Happened。本作及び次作<Decoy>に収録されているこれらの曲名が、どれがどれだか未だに憶えられない。“曲名なんて所詮は無意味”、マイルスのたぶんそういうところは嫌いではないが、聴き手を煙に巻くような曲名の付け方には(自分の記憶力の無さは棚に上げつつ)少しだけ腹も立つ。それにしても最初の2年間ほどのカムバック・バンドは刺激的だ。後の変化が必然だとしてもあるいは惜しい。

KEITH JARRETT / THE MOURNING A STAR

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「玉石混淆。玉を拾い集めるような聴き方しか出来ない」・・この時期のキース・ジャレットを簡潔に評してこう書いた人がいた。言い得て妙、実に的を射ている。筆者の趣旨はどちらかというと否定的ニュアンスだったと思うが、なるほどそんな聴き方もあるのかと指南していただいた形になって、私としては逆に70年代K・ジャレットを前よりもポジティヴに聴けるようになった。有益なレコード評とはこういうものを指すのだと思う。

 

*追記:一般的には引用元を明記したほうが良いというのがネット上でのマナーではありますが、あまり大げさに杓子定規にするものでもないとも思い、私がオリジナルにひねり出した文言ではない旨が分かるような表現をすることに留めました。この私の判断が間違っていると思われた方は(もちろん筆者御本人でも)ご遠慮無くコメント欄にてご指摘ください。また引用元(はてなブログの中の一文です)をお知りになりたい方もその旨コメントください。よろこんで明示させていただきます。

MARY HALVORSON / ILLUSIONARY SEA

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生まれ1936年だというからカーラ・ブレイは御年80才。不謹慎ではあるが「次の人」を探そうか、などと考えることもある。そんな流れのひとつでメアリー・ハルヴォーソンというギタリストを知った。マリア・シュナイダーギル・エヴァンスの後継者ならM・ハルヴォーソンはある記述によればC・ブレイ系だそうな。なるほど分かる。似ているわけではないがそれは良し。似ていたら逆に白けると思う。亜流を探しているわけではないのだ。

THOMAS CLAUSEN, STEVE SWALLOW / Morning... Dreaming...

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トーマス・クラウゼンなる鍵盤奏者とスティーヴ・スワローのデュオ盤。新録音が世に出る枚数からしてスワロー氏との共演を欲する演奏家が数多く存在し、スワロー氏の方でも彼らをあまり拒まないと見える。結構なことだが、そういう演奏家達にたぶん共通するある種の傾向のせいで、一定の水準以上ながら今ひとつパンチに欠けるアルバムに仕上がることが多い気がして残念だ。スワロー氏自身は老いても強い。共演者も強くなければ。